≪春の銘ー海川・山里の風景≫
・青柳(あおやぎ、あおやなぎ)
早春に芽吹いた柳が春風になびいている風情と色彩を賞美することば。
・柳緑花紅(りゅうりょくかこう、やなぎはみどり、はなはくれない)
美しい春の光景を形容していることば。「柳緑花紅、真面目」(北宋詩人:蘇東坡(そとうば))という詩より「柳は緑に、花は赤く咲くといった自然の摂理こそ真理の実相」を意味し、自然のまま作為がないこと、自然の理に任せた悟りの心境や美しさをも表現しています。
・下萌、草萌(したもえ、くさもえ)
冬枯れの大地の下からぽつぽつと青い草の芽が萌え出てくること。
・芳草、芳香(ほうしゅん、ほうこう)
若草の新鮮でかぐわしい匂い、野山にたちこめる香りを表現することば。
・春の水
雪解け水や雨水でかさが増した川や池の水は春の日差しを受け、少し温(ぬる)んでています。
・山笑う
冬枯れの褐色から次第に明るく芽吹き始めた春の山の姿を「わらう」という人間的なことばで表現している。「春山淡冶にして笑うが如く」(北宋山水画家郭煕(かくき))のことばに由来。
・春峰(しゅんぽう)
頂上付近にまだ雪が残った春の峰のこと。
・鶯宿梅、鶯の宿(おうしゅくばい、うぐいすのやど)
鶯がよくさえずる所や梅の木をいう。故事から。時の帝、村上天皇が清涼殿の梅が枯れてしまったので新しいものを探すよう勅命が下ります。ある家に見事な梅を見つけ移植しようとしたところ、家主が枝に文を結びたいと申し出て許可されます。持ち帰った梅を帝がご覧になり文に気づき開いたところ「勅なればいともかしこし鶯の宿はと問はば如何答えむ」と。意味は「勅命と聞いて畏れ多くも謹呈いたしますが、毎年我が家の庭に来る鶯に私の宿はと尋ねられましたらどう答えればよいでしょうか?」という内容。文の主は紀貫之の娘でその木は貫之が慈(いつく)しんでいたものでした。
・雀隠れ(すずめがくれ)
春が深まり草木の丈が雀を隠してしまうほどに伸びた様子。
・鳥の恋
春から夏にかけて交尾期を迎えた野鳥たちがさえずりを交わす野山の風景。
・麦踏(むぎふみ)
早春の頃に土が霜柱で浮き上がらないように、また麦の根つきが悪くならないように麦の芽を踏む光景。
・鐘朧(かねおぼろ)
おぼろな春の夜に遠くからかすかに鐘の音が聞こえてくる春の人里の風景。
次回は、茶の湯の銘ー季節のことば「春ー梅・桜」
※参考文献「茶の湯の銘 季節のことば(淡交社)」
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