≪夏の銘ー天候・気象≫
・三伏(さんぷく)
酷暑の時期をさします。夏至の後の第三庚(かのえ)の日を初伏、第四庚を中伏、立秋後の第一庚を末伏と呼び、
この三つをあわせて三伏になります。「三伏の秋」は旧暦六月の異称で三伏が終わりに近づく月という意をもちます。
・炎天(えんてん)、炎昼(えんちゅう)、炎陽(えんよう)
「炎ゆ(もゆ)」というにふさわしい夏の日盛りをさすことばです。炎陽は旧暦六月の異称。
・朝涼(あさすず)
真夏の早朝、思いがけない涼しい日もあることをさしています。
・梅雨寒(つゆざむ)
梅雨の最中、寒気の影響で気温が下がり、肌寒い日のことをさす。
・片影、片蔭(かたかげ)
夏の強い日差しも午後になると少しずつ傾き、木蔭、家屋の蔭などができている様。
少しずつ伸びるを蔭を人々がもとめて歩く様。
・緑蔭(りょくいん)、木下闇(こしたやみ)
青葉茂木の蔭をさします。緑蔭は少し日がさして明るさが残っている様。
木下闇は土が湿って暗い様。
・碧雲(へきうん)
澄みきった空に浮かぶ青みがかった雲の様。
・雲海(うんかい)
雲がはてしなく悠々と連なり、大海原のようにみえる様。高い山の上、飛行機の窓から見下ろした時の景色。
・雲の峰(くものみね)
白く大きな雲が青空にぐんぐん登っていく様。太陽の日差しが強い時に積乱雲ができる現象も。
・薫風(くんぷう)、風薫る(かぜかおる)
さわやかに吹く初夏の風のこと。野山、谷の淵、水の上を吹き抜けて香りを運んでくる様。
・颯々(さつさつ)
風が吹きわたる様子。それを表現したことばもさす。
・青嵐(あおあらし、せいらん)
初夏の新緑から青葉の頃、青々とした林や野山を力強く吹き抜けてくる少し強めの風をさす。
同時に青々とした山という意味もあるようです。
・晴嵐(せいらん)
晴天の日に霞がかった状態をさす。晴れた日に起こる風をもさす。
・あいの風、東風(あゆ)、あゆの風
北東、または東の海上から陸に向かって幅夏の季節風のことをさす。主に日本海側。
※風の名※
春の東風は「こち」夏は「あゆ」。夏の南風は「はえ」、北風と西風は「きた」「にし」
山から吹く風は「やませ」陸から海に吹く風は「だし」とよぶ。
・朝凪(あさなぎ)
朝の海辺、陸風と海風が吹き変わる時、一時的に風がやむ現象。
・若葉風(わかばかぜ)、青葉風(あおばかぜ)
新緑の中を吹きわたる風のこと。
・若葉雨(わかばあめ)、青葉雨(あおばあめ)
若葉青葉にふりかかる初夏の雨のこと。
・卯の花腐し(うのはなくたし)
卯の花(ウツギ:空木)が白い花を咲かせる頃に降り続く長雨をさす。
・五月雨(さみだれ・さつきあめ)
旧暦五月(新暦の六月)に降る雨。梅雨の季節雨。
・五月雲(さつきぐも)、五月闇(さつきやみ)
五月雨、梅雨の時分に重く垂れこめた雲や、暗さのことをいう。
・梅雨(つゆ、ばいう)、青梅雨(あおつゆ)⇒入梅(にゅうばい)
梅の実が黄熟するころに降り続く雨と時期をいう。青梅雨は同じ意でも新緑に降る雨のイメージ。
・虎が雨(とらがあめ)、曾我の雨(そがのあめ)
曾我十郎と五郎の兄弟が富士野で父の仇討ちをした旧暦五月二十八日ころに降る雨。
兄十郎の討ち死にを悲しむ虎御前の涙が雨になったという故事からきている。
・驟雨(しゅうう)、白雨(はくう)
夏の夕方に降るにわか雨、夕立をさす。
・雨宿(あまやどり)
急な雨にみまわれ軒下や大樹の下に駆け込んで雨を避ける様子。
・喜雨(きう)
日照り続きで万物が枯れてきた頃、ようやく降る本格的な恵みの雨のこと。
・雨祝(あめいわい)、雨休(あめやすみ)
晴天が続き、街に待った雨が降った日は、農家は仕事を休み雨を祝う風習が昔はあったようです。
・夏の露(なつのつゆ)、露涼し(つゆすずし)
夏の朝、草木に宿る露が朝日に光って涼を誘う様。この風情を味わいながら朝茶事では席入りする。
単に「露」は秋の季語。
・氷雨(ひさめ)
初夏に雷雨とともにふる雹(ひょう)のことをいう。
・海霧(うみきり、かいむ、じり)
北海道などで夏の海上に発生する濃い霧をさす。
・霧笛(むてき)
霧で視界が悪いときに、船が位置をしらせるために鳴らす音。
・短夜(みじかよ、たんよ)
夜明けの早い夏の夜のこと。
・夏の月(なつのつき)、月涼し(つきすずし)
見上げた夏の夜空に輝く月は白くおだやかで心がしずまる様。
「月」自体は秋の季語。
次回は、茶の湯の銘ー季節のことば「夏の海川・山里の風景」
※参考文献「茶の湯の銘 季節のことば(淡交社)」
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